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WIPとは(第1回企画演奏会パンフレットより※原文ママ)

WIPはいわゆる「楽団」ではなく「アマチュア演奏家集団」であり、WIPという名称も団体名ではなくプロジェクト名である。メンバーの多くが一般の「楽団」に所属し演奏会に出演したり、コンクールに出たりしている中で集まり、練習では演奏のクオリティ向上に集中する、そんな集団である。第1回の出演者は企画コンセプトに賛同した、主に幹部の友人とそのまた友人、といった人員構成となっている。

WIP立ち上げのコンセプトは、尖った企画の演奏会を実行するというものである。「尖っている」とはどういう事かにも解釈が様々あるが、WIPにおいての定義は、たとえ一般的では無かったとしても自分たちの本当にやりたい事を貫く、としている。また何事においても目標設定をし、それをどのようにしたら実現できるのかを検討して行動する。経営戦略用語に例えてみるとKPI(key performance indicator:重要業績評価指標)は尖った企画の演奏会の実行そのものであり、その手段であるCSF(critical success factors:主要成功要因)が演奏クオリティ向上のための練習方法、そして最終目標であるKGI(key goal indicator:重要目標達成指標)は、WIPが定義づけたコンセプトに共感し、そういった演奏会を聴きたいと思っているお客様の全てに音が届く事である。

では何故そのコンセプトが定義されたのか。日頃楽団に所属していると、それまでの通例や地域とのつながり等、予め決まっていて疑問すら抱く余地のない項目がいくつもある。例えば演奏会の曲目は、オープニングは軽めにこんな感じ、次にこういう曲調のものがきて、こう終わる。定型パターンでいつもやっているから今回も・・・等である。そういった既成概念を一旦取っ払ってみたらどうなるか?を具体的に妄想した。するとそれはとてつもなく高揚感の溢れるものとなっていた為、妄想を現実にすべく実行を始めた。それがWIPの発端であり、掲げるコンセプトの真髄でもある。勿論、そういった地域のつながりや曲構成のバランスを否定している訳では決してない。あくまで本プロジェクトにおいてのコンセプトを定義したまでであり、出演者の演奏会に対する考え方のひとつに過ぎないという事をご理解頂きたい。

また演奏曲目だけではなく、細かいルールにもひとつひとつ独自の理論を持っている。例えば、演奏会への未就学児の入場について、主にクラシックを演奏する時には入場不可で、ポップスを演奏する時には可とする場合がある。この背景にあるのは、ポップスは子供にも馴染むので、共に盛り上がってもらおうというスタンスだが、クラシックの場合は演奏中の客席の静寂を守る為、騒いだり泣いたりする恐れのある未就学児の入場は不可、というものである。しかし、そもそもポップスは子供向けであるという定義には明確な根拠はないし、子供やその保護者のクラシック鑑賞の機会を演奏側が奪う権利はない。未就学児は演奏中に静かにするという常識を理解できない可能性がある為に入場不可としている場合が多いが、つまりそれは騒いだり泣いたりする事がマナー違反なのであって未就学児の入場自体を否定することは無い。そういった根本を考えた結果、今回は「保護者のご判断にお任せします」という文面をあらかじめ宣伝チラシに入れさせていただいた。未就学児であっても、演奏中に静かにできるかは保護者の方次第なのである。

さて演奏曲目についてだが、音楽の楽しみ方は人それぞれであり、聴きたい曲も人それぞれ違っている。そしてプロアマ問わず演奏会においての主役は必ずお客様で、演奏者はお客様の為に演奏をするのは絶対条件である。そこでWIPでは、強固なコンセプトと理論を持った上で演奏したい曲を演奏し、それを聴きたいと思うお客様に聴いてもらう。それが演奏会のあるべき姿のひとつであるという仮説を立て、実行に及んだ。お客様の日々の音楽鑑賞の選択肢のひとつにWIPを選んでいただければ、という選曲をおこなった。

人が演奏会に足を運ぶ際に何が引きとなるかも様々あり、知り合いが出演する、近い、等の理由はあるものの、やはり最大の判断基準は曲目にあると考える。曲目を見て、「行こう」と思うかどうかはほぼ直感で決まっている。その直感(Intuition)を大事にしたい、直感で来たいと思ってほしいとの願いを込めて、ここに「Wind Intuitional Project」と銘打ったプロジェクト名を付けさせていただいた。

繰り返しになるが、WIPは楽団ではなくプロジェクトである。そのため、とりあえず本日の演奏会が終了したら次の予定は決まっていない。第2回演奏会があるかどうかは未定であるが、幹部の雑談の中では、第2回第3回の企画も出てきている。元々が自分たちの本当に演奏したい、やっていたら聴きに行ってみたいプログラムの実現というコンセプトであるため、幹部の人間はかなり曲に対するこだわりが強く、演奏会の曲目企画を挙げだしたら幾らでも出てくる状態である。しかし企画するだけなら簡単で、それを実現するには多大なる労力、苦悩がつきまとう。それを乗り越えることもアマチュア音楽家としての達成感のひとつであるが、メンバーの他の活動や仕事とのバランスを鑑みた中での漠然としたプランは、2~3年に1回のペースでの演奏会の開催である。もしも本日の演奏会で興味を持たれた方は、是非次回の企画に期待して頂きたいと出演者一同願っている。

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